第13話:サスタシャに行こう企画
<これは2015年02月22日に投稿したものを再編集した記事です>

前回のあらすじ。
友達とともにコンテンツファインダーを利用し、初IDであるサスタシャをクリア!
しかし、その時の感想は、「緊張と興奮でなにがなんやら!」というものでした。
くわえて、これが友達との最初で最後のダンジョンになることを私はまだ知らなかったりします。
さらにこの翌日、一撃確殺SS日記で発表された一大イベントが私に大きな衝撃を与えるのでした。
◆
サスタシャをクリアしたことでメインストーリーの進行に力を入れるようになった私。
そんな中、とあるイベントが発表されます。
それが、「初心者支援企画:サスタシャに行こう!!」でした。
このイベントは、じょびネッツァの方々が中心となって行う、熟練者の熟練者による初心者の救済。
ダンジョンの進み方、パーティバトルの基本などを教えてもらえるという素敵な企画でした。
これが一撃確殺SS日記で紹介されたその時、

そんなステキ企画を前にサスタシャを攻略してしまった私の心境は、筆舌に尽くしがたいものでした。
もう少し、もう少し攻略が遅ければ、


あんなことにはっ!!
ですが、やってしまったものは仕方ありません。
サスタシャにもう1度行こうにも、そこには本当に助けを必要とする初心者の方がいる。
そして、助ける側に立っているのは幾多の死線を乗り越えてきた熟練者の方々。
1度の経験と浅はかな知識では、双方に迷惑をかけてしまう。
私が入り込める余地など、どこにもない……。
でも、何かしたい。
先日サスタシャをクリアし、なにがなんやらと思ったからこそ、この取り組みがどれだけ初心者を救うことか理解できる。
それを企画した方々、支持する方々の役に立ちたい。
大きくなくていい、雀の涙ほどでもなにか出来ることはないだろうか。



!!

◆
新生エオルゼアの世界では、食事をすると経験値の獲得量に3%のボーナスがつきます。
その食事に必要なのが、調理品。
これらはマーケットおよびショップで購入が可能です。
しかし、調理品を作り出すことができるクラスがあります。
それが、

調理師です。
さっそく私はギルドの門をたたき、調理師となりました。
こうして差し入れを作ってサスタシャに届ける、それが今の私にできる唯一のお手伝いと思ったのです。
◆
私は調理師のレベルをあげるため、ひたすらに調理品を作り続けました。
「夜のサスタシャ支援が始まるまでに、なにか良いものを!」という心意気です。
とはいえ、今日始めばかりの私が効果絶大の素晴らしい調理品を作るのは不可能。
「ゲーム内のアイテムなんざ効果重視よ!」という方もいるかもしれません。
たしかに、経験値+3%はどんな調理品にでもつくので、私も自分で使うのならなんでもいいです。
でも、自分が作った調理品を誰かが食べるのなら話は別です!
ゲームだろうがなんだろうが、誰かのために作るものは特別なもの。
だからこそ趣旨、趣向を凝らし、自分らしく作り上げる。
それがクラフタークラスの本懐であると、私は思うのです。
そうして夜、私はサスタシャ支援の差し入れとして、とある調理品を量産します。
それがこちら、

ミコッテ風山の幸串焼。
じょびネッツァのマスターであるマイディーさんをイメージできる一品且つ、肉と野菜で栄養バランスに優れ、串にささっているので野外でも食べやすい。
こういうことを考えながら調理するのはとても楽しかったです!
◆
調理品を量産した私は、さっそくサスタシャへと向かいました。
しかし、ここで大きな問題に直面します。
そうです、緊張です。
サスタシャ前にはID初挑戦の初心者の方と、歴戦の熟練者が集っているはず。
そこに差し入れだけを持って入り込むのはどうなのだろう。
「お呼びじゃないよ!」とか言われたらどうしよう。
そんな不安に、駆け出した足が止まりそうになりました。
でも今日1日、少しでも役に立ちたくて頑張った。
ここで諦めたら、そのすべてが無駄になる!
それだけは嫌だっ!!
そうして辿り着いたサスタシャには、じょびネッツァの方々が立っていました。
むしろ、それ以外のプレイヤーはいなかったと思います。
デジャヴを感じるほどにタイミングとしてはベスト。
今のうちに差し入れを渡せば、今後来るであろう初心者の方に配ってもらえるはず!
「こんばんはー」
ガチガチに緊張しながらも挨拶をし、用件を伝える私。
その時にお話し出来たのが、きりんさんとクライブさんでした。


きりんさんは私を見ると、「スジャータですよー(スジャータ=きりんさんの専門用語でサスタシャのこと)」と声をかけてくれたり、差し入れの事を聞いたさいも、「アイスですか!?」と問い掛けてくれました。
それに返答しようとするも、緊張MAXな私。
きりんさんのことを何と呼べばいいのかですごく悩みます。
普通に考えれば「きりんさん」ですが、どうしても引越センターが頭を過ってしまう。
くわえて、ぞうさんとセットじゃないとどこか落ち着かない。
しかし、だからといって「きりんちゃん」と初対面で呼ぶのは馴れ馴れし過ぎるかもしれないと考えます。
相変わらずですが、バカはバカなことで真剣に悩むのです!
そうして、
「アイスじゃないです、キリンちゃんさん」
さかなくんさんみたいな感じに呼んでしまった私。
この時は緊張でなんとも思いませんでしたが、思い返すとかなり恥ずかしい一件です。
きりんさんの事を「きりんちゃんさん」と呼んでしまった後、私はクライブさんに差し入れを渡しました。
「参加者の方に食べてもらえればと思います」
そう言った時、
「お心遣い感謝です」と言って、クライブさんはハイエリクサーを、きりんさんはブラスイヤーカフスを私にプレゼントしてくれました。
あの時はありがとうございました、言葉に出来ないくらい嬉しかったです!
どちらも思い出深い品で、大事に保管しておこうとも考えたのですが、ブラスイヤーカフスのほうは私服装備に加えさせていただきました。
その後、
「もしピンチになったとき、助けてくれれば幸いです」
クライブさんにそう言われたのですが、
「私はまだ誰かの力になれるほど強くありません」
当時の私はそんなことを言って、断ったのを覚えています。
勇気がなかったのです。
支援側となって誰かを救うなんて大それたこと、自分には出来ない。
だから、こうして差し入れをするという形でしか役に立てない、そう思ったのです。
せっかくのお誘いだったのに、背中を押してくれたのに、それに応えることができないままに、私は別れを告げてサスタシャを後にしました。
◆
翌日、私はまたも差し入れを作り、サスタシャ前へと走りました。
今日も受け取ってもらえるかな、そんな淡い期待を抱いていた私の目に飛び込んできたのは、

サスタシャの専属コックと言わんばかりの存在感を放つ、高レベルの調理師プレイヤーさんでした。
このプレイヤーさんは暇つぶしに調理をしていたのかもしれませんが、当時の私は愕然とします。
自分に出来る唯一のことがなくなってしまった、そう思ったのです。
役に立ちたいと思う気持ちは同じのはず。
けれど、目の前の調理師さんには勝てない、そう思わずにはいられませんでした。

もう、私に出来ることは何もない。
大した差し入れも作れない、支援側にまわって初心者の方を助けることもできない。
サスタシャに、自分の居場所はない。
私は差し入れを誰かに渡すこともなく、静かにリムサ・ロミンサへと戻ったのでした。