第16話:サスタシャ村の思い出(別ロール編)
<これは2015年03月04日に投稿したものを再編集した記事です>

前回のあらすじ。
サスタシャ前に行くようになった私は、そこでいろいろな人々と出会い、少しずつ変わっていくのでした。
◆
多くの方が集い、賑わうサスタシャ前。
しかし、時間帯によっては人が集まりにくいこともありました。
そんな時に発生していたのが、支援側のロール不足。
サスタシャ攻略にはTANK1名、DPS2名、HEALER1名のパーティが必須。
もしも訪れた初心者さんが1人で、ロールがDPSに該当するものであったならば、支援側はTANK1名、DPS1名、HEALER1名の計3名がいなければなりません。
しかし、集まっている人が少ないと、「今のここにはHEALERのプレイヤーがいない! これじゃあ出発できない!」という状況が発生していたのです。
私はこのロール不足で、「TANKのプレイヤーがいない!」という事態によく遭遇しました。
TANKはパーティの1番槍となって敵の注意を引きつけ、仲間を守るのがおもな役目。
とはいえ、猪突猛進ではいけません。
どの敵をどう引きつけるか、どの攻撃は回避すべきかなどを考えながら、常にモンスターの視線を釘付けにせなばなりません。
また、TANKはパーティ内でも防御力が高いので、ちょっとやそっとの攻撃では力尽きませんが、他のロールはそうではないため、TANKがちゃんと機能しないと全滅することもあります。
それゆえ責任重大と考え、手を出せない人が多いのかもしれません。
しかしこの時、サスタシャ前のTANK不足に対し、行動を起こしたプレイヤーが2人いました。

1人目はクールビューティーなミコッテのラキさん。
TANKのロールにつくため、剣術士になることを決意されます。
そして2人目は、

私です。
サスタシャに来る前なら、見て見ぬ振りをしたに違いありません。
けれど、この時の私は多くのプレイヤーさんと出会いって本当に救われました。
私も誰かを少しでも救いたい!
こうして私も、TANKのロールが割り当てられる剣術士になることを決めたのでした。
◆
ウルダハの街で剣を取り、装備を揃えて始まった剣術士。
といっても、初期レベルではサスタシャの攻略に行けないので、まずはTANKの動きにも慣れるため修行です。
その時に学んだのが、ターゲットマーカーでした。
ターゲットマーカーとは指定したものに対してマークをつける事が出来るシステムで、

このように、敵に番号をつけたりして使用することが多いです。
どの敵から倒すのかをマーカーによって示すことができるため、非常に便利。
このマーカーと剣術士としての動きを身につけるため、私はひたすらにモンスターを狩りました。

途中、同じく剣術士の腕を磨いていたラキさんを見かけることもあり、そのたびにサスタシャ前で合流出来るのが楽しみでした。
◆
修行の末、サスタシャ攻略に相応しいレベルとなった私達は、来たるべき時のために待機していました。
そして、ついに募集の声が響きます。
「TANK1名、誰かいませんかー?」
その時、私とラキさんは、
「ラキさん、出番です!」
「イフさん、いってらっしゃい」
互いの名前を同時に発言したのでした。
周囲からどう見えたかは分かりませんが、私はお互いの努力を称え、出番を譲りあったみたいな感じがして嬉しかったです。
その後話した結果、今回は私が支援に行くこととなりました。
ダンジョンはサスタシャだけど、ロールは初めて経験するTANK。
いうなればこれは初陣――思わず胃液が泡立ちます。
「合戦じゃ、サスタシャ合戦じゃ! 大将首とるでよ、お腹痛い!」みたいなテンションです(意味不明)。
そうして始まった初のTANKでの支援。
ダンジョンの解説はじょびネッツアのマイディーさんが担ってくれました。
マイディーさんは攻略を始める前に、ダンジョンでの注意事項を初心者さんにいくつか説明。
その中に、「ダンジョン内では基本TANKの前に出ないこと」というものがありました。
それを聞いた瞬間、私は「ん?」と漏らします。
「TANKより前に出ないで」と言われたからには、パーティ内の誰もが私より前に出ることはありません。
じゃあ、いったい誰がボスまでの道を把握して歩き、皆を連れて行くのか?
信じ難いことに、当時の私はそんなことを疑問に思ったのです。
そして、これまでのサスタシャ支援を思い出し、すぐに答えへと辿り着きます。
「あっ、TANKである自分だ!」と。
ちなみに私には、ゲームだとウルダハとリムサ・ロミンサで迷子になった経験があり、リアルだと大阪駅と東京駅から出られなくなった経験があります。
自他共に認める、生粋の方向音痴です。
そんな私がまさか、パーティの皆を引き連れてダンジョン内を進むことになろうとは!
「右手をご覧ください、これが薬指です」くらいのガイドしか出来ない私が!
マーカーや動きを理解するために修行を重ねている場合じゃなかった。
なによりも先に、サスタシャ内部の地図を頭に叩き込むべきだった!
そんな後悔を今さらしても、時すでに遅しです。
ならばと、当時の私はポジティブな思考へと走りました。
落ち着け、イフ・ベゲーグヌング。
こういう時、あわてたほうが負けなのよね。
ダンジョンといってもサスタシャだよ? 今まで弓術士として参加し、DPSの立ち位置で何度も来ているサスタシャ。
もしかしたら道くらい、指が覚えているかもしれない。
いや、そうに決まっている!
マイディーさん「イフさん、そっちは来た道です」
まだです、まだ挫けません。
当時の私はまだ折れませんでした。
でもあの、だいぶ、きてます。
お、おちけつ、おちけつだよ! なにを緊張することがある私!
あのサスタシャだよ? 幾度となく訪れ、ボスを皆で倒してきたサスタシャだよ?
そうとも、よく周りの風景を見て進めばすぐにボス前だよ、間違いない。
さぁ、行きますよ! DPSさん、HEALERさん!
マイディーさん「イフさーん、そっちじゃないです! 戻ってー!」
そうして、本気で迷子になる私。
駄目だ、飲み込まれる! このサスタシャというダンジョンそのものに飲み込まれる!
よく考えたらここは天然の要害! 迷えば2度と外には出られない!
これが、これが、サスタシャ侵食洞の真の恐ろしさ!
あの時、私とご一緒した方々すいませんでした。
はじめに、「道はちょっと自信ないです」って言えばよかったのに、変に行けると思った結果、時間ギリギリになってしまいました。
しかもTANKとしての活躍もイマイチで、敵の攻撃が私に集中せず、かなり不安にさせたかと思います。
一応クリアは出来たものの、私の初TANKは本当にこんな感じで、相変わらず反省点の多いものでした。
しかしながら、「もうTANKなんてやらないんだから!」とはならず、その後何度かTANKでの支援を私は行います。
はじめての時にたくさん失敗して、悪いところが見えて、どうしたらいいかが分かったからです。
また、いろいろとアドバイスもいただきました。
失敗したからと言って、落ち込むことなかれです。
その経験は必ずプラスになります。
たとえば、TANKを経験したおかげで私は、弓術士のロールであるDPSに戻った際、TANKが今なにをしているのかという事に気付けるようになりました。
このタイミングで攻撃されると困るかもしれない、この敵は誘導したいっぽいからちょっと待とう、というのがなんとなくですが分かるのです。
1つのものを極めていくプレイも楽しいですが、こういう経験もなかなかに面白いので、たまには寄り道もいいと思います。
いつもの視点では見えない、新たな事柄に気付けるやもしれません。