第56話:アクキー奮闘記③「拒むものたち」

前回のあらすじ。
東京へ行くため、いろいろと用意しました。
◆

バッグや服などに続いて他の荷物も準備完了。
あとは今日の夜に電車で京都駅へ行き、23時頃発の深夜バスに乗ればOK。
しかし、思わぬ災厄が訪れていました。
そう、この日は――

風が強かった。
おかげで電車の運行に支障が出ており、すでに運転見合わせの線もあるとか。
蛮神ガルーダが召喚されたかのような、まさかの非常事態。
このままでは東京はおろか、京都に着くことすら叶いません。
冗談じゃない!
私にとって今回の東京は一世一代のイベント。
そっちが風量を増して進行してくるっていうなら、それよりも先に最寄り駅へ行ってやる。
そして京都行きの電車が運転見合わせになる前に乗り込んで、是が非でも京都駅に辿り着いてやる。
覚悟を決め、万全の準備をした私をなめるな、ナウフォー!!
というわけで、

急きょ予定を変更。
荷物を再確認し、シャワーを浴びて出発の準備。
ちなみに「明治の人」の出番は東京に着いてからなので、この時点での服装は普通の田舎者となっております。
出勤時とは比べ物にならないほどの速度で夕暮れの最寄り駅へ。
しかし、すでに京都行きの特急列車は運転見合わせの状態。
だが、それがどうした!
特急列車が使えないなら、普通列車に乗り込むまでのこと。
生憎と時間はたっぷりありますからね、のんびり風景でも楽しみながら行ってやりますよ。
それでも時間が余るようなら京都駅で前夜祭です、ざまぁみろ!!


ほとんど寝てやりましたよ、ざまぁみろです!!
・・・いや、ざまぁみろじゃないですね。
行きの電車で寝るとか、深夜バスで寝れないフラグ立ちましたよ。
京都から東京まで何時間かかるか知りませんけど、その間ずっとバスに揺られるとか拷問じゃないですか。
しかも消灯した真っ暗な車内で揺られるんでしょ、拷問じゃないですか。
◆

なにはともあれ無事に京都駅到着。
けれども時間が早過ぎるので前夜祭の始まりです、イヤホーウ!
深夜バスの中でお菓子とか食べると他のお客さんの睡眠妨害になるため、お腹が減らないようにがっつりいきたい所存。
そんな中で視界に入ったのが、

SPICY MASARAでした。
こちら京都駅の南北自由通路の階段横にあるカレーショップ。
近くを通った際に見つけ、香りに誘われ店前まで足を運んでしまった次第。
しかし、ここで食事をするということは体にカレーの匂いを纏うということ。
このあと深夜バスに乗る身としては、絶対に避けたほうがいいメニュー。
他のお客さんの迷惑にならないためにも、ここはぐっと我慢します。
自分の欲望より見知らぬ誰かのことを考える、社会人の常識ですね。
そういえば京都駅には美味しい回転寿司があると聞きました。
お寿司なら匂いもそんなにきつくないはず、そっちにしましょう。

違うの、話を聞いて!!!
あのですね、回転寿司を食べるためにはカレー屋を通り過ぎて階段をおりた挙句、ちょっと歩かなきゃいけなくてですね。
けれども、控えめに言って今の私の荷物って重いんですよ。
あとエオルゼアのSSだと全然映らないんですけど、

この杖が思った以上に邪魔。
なんですかこの杖。
バッグに入らないサイズなので傘のように持ち歩くしかないんですけど、傘のような機能はないので本当にただの棒ですよ。
まだ京都なのに、「これ本当に必要かな?」って思わずにはいられないわけですよ。
そんな自問自答をしているうちにSPICY MASARAに入っちゃって、気付いたら食券を購入していたというオチ。
・・・まぁ、前夜祭ですからね。
ちょっとだけ自分に素直になるのもいいかなって。
ちなみにトッピングはトンカツにチーズという悪魔の組み合わせ。
一口食べたところ、社会人の常識とかどうでもよくなるくらいに美味しかったです、イヤホーウ。
◆
カレーを食べても有り余る時間、まだまだ前夜祭は終わらない。
しかし、夏の都会の気温+大荷物+杖+カレーのコンボで歩き回ると汗が噴き出します。
食後の軽い運動がガチのスポーツになる引き籠りの体、スパイシーな匂いに汗の匂いのデバフも付与され、いよいよもって目も当てられない状態。
これを見越して出発前にシャワーを浴びましたが、どうやら水とガスの無駄だったようですね。
そんな私ですが、ここで明日のための買い物をします。
そう、いわゆる「差し入れ」ってやつです。
とはいえ、ここで生八橋なんかを買っていくのは初見未予習の若葉ちゃんがやるNG行為。
そのへんはきちんと予習済みなため、私は失敗しません。
というわけで購入したのが、

「急冷! ヒヤロン」です。
こちら叩くだけで冷たくなるという魔法のような商品。
夏のビッグサイトの暑さは「食べ物も人も殺すレベル」と聞いたため、そこで活動する方の癒しになればと思った次第。
これならお手頃サイズだし、腐ったりもしないので日を跨いでも大丈夫。
エオルゼアでは「初見です」を多用して床ペロする私ですが、リアルではこの冴えっぷり――見直してもらえましたかね。
ちなみに、マエルさんの所に駆けつけるフレンドさんの人数が不明だったため、購入前にDMで聞いてみたのですが、結局分からなかったため余裕を持って10個ほど購入しました。
こういうのは数が足りなくて涼めない人がいたら戦争になりますからね。
重い荷物がさらに重くなりましたが、これは友情と絆の重みなので頑張っていきますよ。

いや、思った以上に重くなりましたねこれ。
バッグを引く腕が悲鳴を上げ、発汗量がいささか増えた気がします。
もう東京に行く前に死にそう、勝手に抱え込んだ友情と絆に殺されそう。
◆

動き回ると力尽きると思ったので、駅前のドン・キホーテで涼むことに。
クーラー万歳、扇風機コーナー万歳、けれども何も購入しない絵に描いたような迷惑客。
お願いします許してください、これ以上荷物が重くなったら本当に死んでしまいます。
「前夜祭、イヤーホウ!」とか思っていた最初のテンションはどこへやら、すっかり意気消沈。
だいたい夜なのに都会ってなんでこんな暑いの、気でも狂ってるの?
田舎者のイナゴは故郷の快適さを思い出さずにはいられませんよ、ムカデとか出るけど。

そろそろバスの乗り場で待機しといたほうがいい時間帯のため、名残おしいですがドン・キホーテを出ることに。
しかし、予想以上にバスの乗り場が多い京都駅。
いったいどこで待機するのが正解なのか、明確な場所を知るためバスの予約サイトからマップを開きます。
すると、

なぜか読み込み中が続き、なにも表示されない。
なにこれ、ドン・キホーテの呪い?
タダで涼んだ罰がこんなかたちで出るなんて予想外なんですけど。
このままでは見当違いな場所に立ち尽くし、バスに置いていかれるのがオチ。
冗談じゃない、バスのチケットだけでなく、ヒヤロンまで買ったんですよ?!

けれども画面は高速観覧車状態。
回り続けて結局表示されないを繰り返す始末。
天候に恵まれなかったうえにネットがこの有様。
くっ、お前まで私を拒むのか!

そんなこんなしていたら電池がチョベリバ。
こうなったら――

人に聞くしかない!
バスの乗り場に立っているなんかそれっぽい人に、予約したバス会社と出発時間を伝え、どこの乗り場なのかを教えてもらうことに。
文明の利器が使えない今、これが最も確実な方法。
すると、

それっぽい人、なんと迅速且つ丁寧に教えてくれました。
ありがとうございます、おかげでイナゴは京都を発つことが出来そうです。
◆

教えてもらった場所に行き、係りの人に予約番号などを告げ、座席を確認。
あとはバスが到着するのを待つばかり。

ちなみに実際に待機したのはこんな場所。
屋根があるため雨の日も安心ですね。
しかし多くのバスが行き来するため、乗り間違いにはご注意を。
さて、バスが来たらあとは乗り込むだけなのですが、その前にやっておくことがあります。
今こそキャリーバッグから出でよ、

ショルダーバッグ!!
鞄の中から鞄を取り出すという、文字だと最強のゆとりに見えるこの行為。
しかし、ここから先はコンパクト且つ、瞬時に物を取り出せる利便性が必須。
そこでいろいろな物を予め仕込んでおいた、このショルダーバッグの出番というわけです。
荷台に積まれるキャリーバッグとは違い、こちらは座席に持って行けるサイズ。
中には水や酔い止めの薬はもちろん、タオルやウェットティッシュ、充電器にイヤホンなどなど、あらゆる物が入っています。
怖い、自分の準備の完璧さが怖い(杖は除く)。
そんなこんなしているとバスが到着。
引き籠りのイナゴ、いよいよ東京へ向けて出発です。