第58話:アクキー奮闘記⑤「やらかしin東京」

前回のあらすじ。
国際展示場駅まで到着。
ホテルでチェックインを済ませてから会場に行こうとしましたが、駄目でした。
◆

全ての持ち物とともに、ついに足を踏み入れた東京ビッグサイト。
暑い、人多い、荷物重いの三重苦の中、とりあえずパンフレットを購入。
七夕用の笹が設置されておりますが、願い事をするのは後回し。
まず目指すはマエルさんのサークルです。

ちなみに場所は西1ケ41aですね。
うん、なるほど、なるほど。

思わず博多弁が出るイナゴ。
とはいえ、もう足を使って探すしかありません。
しかし、その前にヒゲと丸メガネをつけるためトイレへ。
探す途中でウマ状態のマエルさんに会うかもしれませんからね、身だしなみは完璧にしておきましょう。





ヒゲつかないんだけど!?
ここにきてまさかのアクシデント。
何度も挑戦しますが、やはりつかない。
しかもその醜態を用を済ませた方々に後ろから見られる始末。
やめろぉ、「こいつトイレで何してんの?」みたいな眼差しを向けるのはやめろぉ。
鏡に反射して見えてるんですよ、お前達のその疑問に満ちた目は。
ちょっとメイク直ししてるだけですよ、察せよ!
察して早く出て行けよ!!!
◆
結局どうやってもヒゲがつかないので、黒丸メガネだけかけてトイレを出ることに。
しかし、このアイテムにも思わぬ障害がありました。
前回の記事で書いた通り、私の視力はそれほど良くありません。
なのにこのメガネには度が入っていないうえに、レンズが黒色に染められています。
ということはどうなるかというと、

こんな感じに世界が見えるわけですね。
見えるわけですねっていうか、ほとんど見えないんですけどね。
そんな状態で西1ケ41aとかいう、日常生活では耳にすることのない場所を探すわけです。
探すわけですっていうか、ほとんど見えないんですけどね。

そんなわけで結局いつものメガネ(黒帽子はかぶっていますが、エオルゼアだとメガネとの併用が出来ないので心の目で見てください)。
もう、ぐっだぐだだよ。
しかし、こんなことで例の企てをやめるわけにはいきません。
マエルさんは私の到着を今か今かと待ってくれているはず。
必ずやお手伝いフレンドさんの度肝を抜いてやりますよ。
にしても、テレビやネットでしか見たことがないこの場所に足を踏み入れることになるとは、感慨深いものがありますね。
出来るだけお登りさん感なく進もうと思いましたが、自身の格好がすでにアレなので存分にキョロキョロすることに。
そうして会場をぐるぐるまわり、

やっと、やっとマエルさんのサークルを発見。
ついにきました、この時が!
落ち着け、落ち着けイナゴ。
一旦距離を取り、スケッチブックを取り出して装備。
まずは、目標をロックオン。
あとはDMでの打ち合わせ通り、スケブを渡してネタばらし。
そうしてお手伝いフレンドさんを驚かし、イナゴと黒ウマ道士の企ては大成功を収めるわけです。
それでは、ショータイム!!


よし、まずは順調な滑り出し。

あとは例の自己紹介ページが開かれたタイミングで名乗ればパーフェクト。
逃すわけにはいかない、その刹那。
3、2、1・・・今っ!!

決まった、決まりました。
ばっちりスケブが開かれ、絵を見た瞬間に名乗れました。
これはもはや大成功間違いなし、やりましたねマエルさん!!


あ、あれ、なんですかこの反応。
まるで本当にイナゴを知らないかのようなこの空気。

いやいや、もうその顔はいいよマエルさん。
DMで打ち合わせした企ては大成功に終わったんですから。
ていうか、どっちがマエルさん?
ウマの被り物してないから分からないですけど、早く横にいるお手伝いフレンドさんに事情を伝えてください。

いや、ちょっと、ウマ!!
もういいって、早くこの空気をなんとかしてくださいお願いします!!
いや――
いや、待って。
もしかしてこの反応はガチなのでは?
だとすると私は、



ア、アイェエエエエエッ!!!!
お隣!? お隣ナンデ!?
ここにきてサークルを間違うという、まさかのやらかし。
無関係な人をマエルさんと勘違いする大失態。
これが東京ビッグサイトで密かに起きていた悲劇――イナゴ勘違い事件である。
◆


いや、殺してください。
そのスケブで私の首を、この屑虫の首をひと思いにハネてください。

そんなわけで、エオルゼアの方とリアルで初の顔合わせ。
その感想は控えめに言って、今すぐ死にたい。
ちなみにこの時、マエルさんは作業のためウマの被り物を被っておらず、くわえてお手伝いフレンドさんも買い物に出ておられました。
なんというバッドタイミング。
さて、普通ならここでもう少し会話し、売り物であるアクキーを購入するところですが、

当時の私にそんな精神的余裕は皆無。
現代社会に鍛えられたおかげで表面上はにこやかに保っていますが、裏側はかつてないほどにボロボロです。
考えてもみてくださいよ。
全然知らない人達に「イナゴです」って書いたスケブ渡して、その後キメ顔で「はじめまして、イナゴです」って意味不明な自己紹介したんですよ?
しかもそれを隣で、エオルゼアのフレンドであるマエルさんに見られたんですよ?
そしてその後、一緒に謝ってもらったんですよ?
控えめに言って死にたいでしょうよ!!
そんな状態で「アクキーください♪」なんて言えるわけがない。
なので私は、

逃げました。
いや、仕方ないじゃないですか、限界ですよ。
「情けない奴」って思ってる方、やってみてくださいよ。
ゲームのフレンドさんとの初の顔合わせで、私と同じことやってみてくださいよ。
知らない人達に痛い自己紹介書いたスケブ渡して、ドヤ顔でゲーム上の名前を口にした挙句、初対面のフレンドさんに一緒に謝罪してもらうんですよ?
やってみてくださいよ!
やれよ!!!
そんな私に次回、追い討ちをかけるようなことが起きます。