第45話:オフ会参加録⑮「横浜試してガッテン」

前回のあらすじ。
北京ダック(肉のみ)をゲットしました。
◆
己の欲望フルオープンアタックで北京ダックを入手。
しかし、これを路上で食べるのは如何なものか。

さっきの肉まん2個は、まだ立ち食いしてても違和感の薄いものでしたが、

北京ダック(肉のみ、タレ付き、箸あり)はどうだろう・・・。
こんなのを路上で食べていたら絶対に注目の的。
着ている服も相まって視線の集中砲火に晒されてしまう。
きっと隠し撮りもされて、「本場の人間が北京ダック貪ってるなうw」とか呟かれるに違いない。


というわけで1人になれる場所を探すことに。
しかし、ここは横浜の観光名所である中華街。
1人で落ち着いて食事が出来る場所など皆無――皆さんそう思っていませんか?

じつは私もそう思っていました。
でも、探すことを決して諦めなかった。
いつか、いつか自分だけのユートピアが見つかるはずと。
誰にも侵されない、自由な空間を手に入れられるはずと。

歩きました。
だんだんと体温を失っていく北京ダックを案じながら。
そうして私はついに、中華街から少し離れたところで見つけるに至ったのです。
誰にも邪魔されず、独りで、静かに食事が取れる場所を。
それがこちら、

ラブホです。
ここなら人の目を気にしなくていいうえに、クーラーまで完備。
さらに食後はシャワーも浴びれるし、歯を磨くことも出来る。
なんなら時間に余裕があるので、ひと眠りしたって大丈夫。
ここをイナゴの縄張りとする。
問題があるとすればそうですね、

ラブホから出るところを、中華街で合流予定のメンバーに見られてはならないってことですかね。
これはブログ公開まで絶対秘密、そうでなければ余計な誤解をされてしまう可能性があります。
「あんな所でいったい何を・・・」と聞かれ、「いや、あの、北京ダックを・・・」みたいなことになっても困りますからね。
「北京ダックと!?」って驚かれてアンジャッシュ状態になるのがオチですからね。
◆

御馳走様でした。
北京ダック、とても美味でございました。
皮が美味しいという情報は知っていましたが、想像以上でしたね。
さて、まだ時間はあるので――

一息つきましょう。
どうせ外は暑いですし、そのせいでまた余計な出費しそうですし。
たとえばそうですね、タピオカミルクティーとか買いそうですね。
朝から肉まんに北京ダック、そしてシメにタピオカミルクティーという、中華街の必殺コンボ決めちゃいそうですからね。
中華街DMグループに動きがあるまでは待機です。


意外に早く動き始めたDMグループ!
え、まだ午前中なのに。
こっちは絶賛ウトウト中ですよ。
寝不足で歩き回ったうえに、お腹いっぱい食べたので、まだちょっと起きれませんよ。
でもここで馬鹿正直に、「ラブホで休憩してます」なんて言ったら変な誤解を生むことは必至。
しかし、合流するにはまだ時間がかかる。
というわけで、

ぼかしました。
ホテルにラブを付けないことで、「宿泊予定のホテルで休んでるのかな?」と思わせる作戦です。
自分にとって不都合な部分は曖昧にして報告、されど深掘りされても嘘はついていないと主張出来る言い方。
日本では政治家がよく使うこのテクニック、さすがは一流大学を出た連中が考え出したもの、国民の役に立ちますね。
でも、ちょっと心苦しい。
きっとこのメッセージを読んだ人は「深夜バスが辛かったのかな?」と思い、私を心配してくれることでしょう。
「体調は大丈夫ですか?」なんて返信がきたら罪悪感で泣いてしまいます。

余計な心配でしたね。
40秒ってボクサーのインターバルより少ないじゃないですか。
パズーが支度する時間じゃないですか。
こうなったら少しずつ意識を取り戻し、自身を対人用に仕上げなければ。
控えめに言って今の状態は、食って寝てる休日のイナゴ。
ここから頑張って一般の人間に擬態する、失敗は許されない。

あぁっ!!
しまった、一般人を装いたいのに一般人の服じゃない。
あの時はテンションに任せて購入し、表(赤色)で中華街を歩き回ったこの服。
しかし、ちょっと寝て起きて冷静になったら後悔の塊にしか見えない。
こんな派手なものを着て初対面の光の戦士達とリアルで会うとか正気か?
その中にはアルチさんも含まれているんだぞ、なんとか言えよ過去の私!!

こうなったらチャイナ服に着替えた際に、ショルダーバッグに突っ込んだリア充の服を着直すしかない。
そうとも、こっちなら何も問題はない。
安心してください合流メンバー、イナゴはブログに書かれているよりもマシな一般人ですよ。

あぁっ!?
しまった、勢いで丸めてショルダーバッグに突っ込んだからか、しわしわになってる。
実写版ピカチュウの顔みたいになってる。
◆
落ち着け、クールになるのです。
そのためにも1度シャワーを浴びましょう。
とっくに40秒は過ぎていますが、急いては事を仕損じると言いますからね。


さて、落ち着いたところで服の問題です。
現在装備可能なのは約1万円のチャイナ服と、しわしわのリア充服のみ。
どうにかして後者を着て行きたいところですが、都合良くアイロンなんてありません。

以前テレビで見たことがあります。
ファブリーズみたいなやつをハンガーに吊るしたしわしわの服に吹き掛けてしばらく待つと、まるでクリーニングから帰ってきたような仕上がりになる的な商品を。
さすがにその商品はありませんが、ようは適度な水分を含ませてしわを伸ばせればいいはず。
ラブホに設置されている消臭スプレーを使えばなんとかなるかもしれない。
ここは1つ、試してガッテンです。
ということで、

懇願のメッセージを送っておきましょう。
ていうか、みなとみらい線ってなに?
そんな便利な線があったんですか、私は桜木町駅からタクシーですよ?
さておき。

さっきの写真にも映っていたこのファブリーズもどきを使い、リア充の服をレイズします。
やり方は服をハンガーに吊るし、多めにシュッシュッするだけ。
エオルゼアの蘇生より簡単でモコ草生える。
しかもいい匂いまでつくし、一石二鳥ですね。


変わってない!!
むしろ余計なことをして悪化した感ある。
役に立たないファブリーズもどきめ、今回の試してガッテンは失敗ですよ。
こうなると残された選択はチャイナ服のみ、もう覚悟を決めるしかない。
次回、合流メンバーが衝撃を受けたアルチさんとの邂逅がブログで蘇ります。